誤解多発で要注意!「年の差婚」の実態
―「3歳差が普通」は第2次世界大戦直後まで―
フィルターバブルとは
ニュースなどの情報を動画配信やSNSなどで日々チェックしている皆さんが陥りやすい罠、「フィルターバブル」をご存じでしょうか?
ネットの情報媒体には少なからず、推薦エンジンが仕組まれています。つまり、読者がより関心が高いだろうと思われる記事を優先的にトップ画面や画面の上位に表示することで、読者により多くの記事や配信を読んでもらおうとする仕組みです。
例えば、同じ日、同じ時刻にYouTubeを見ていたとしても、
Aさんのスマホ画面:ネコ動画が沢山あがってくる
BさんのPC画面:ゲーム情報が沢山あがってくる
Cさんのタブレット画面:不倫関係の動画ばかりあがってくる
といったことが起こります。これはユーザーの過去の閲覧履歴から推薦エンジンが類似の投稿をおすすめしてくることで発生する現象です。
しかし、このフィルターバブルの仕組みをよく理解していないと、
Aさん「最近は犬好きよりも圧倒的に猫好きが増えたよね!」
Bさん「このゲームって、ユーザーがびっくりするほど多いんだなあ」
Cさん「世の中、不倫ばっかり。結婚したっていいことないよね」
といった感想を持つようになりかねません。
フィルター(推薦エンジン)によって特定の話題や視点に偏った情報が肥大(バブル)化した世界観が目の前のネット内に作り出されることで、視聴者が実態からかけ離れた偏見を持ちかねないという点で、フィルターバブルについて、常日頃からよくよく気を付けておきたいところです。
最近は年の差婚が珍しくなくなった・・・??
結婚に関するネット記事や動画のコメント欄などで、「最近は年の差婚が増えて珍しくなくなった」といった書き込みを見たことがある方がいるかもしれません。
実はこの書き込み主がそう信じて書き込んでいるならば、「フィルターバブルの罠にはまってしまった典型例」といえます。
どういうことでしょうか?
そこで、年の差婚の実態をデータで確認してみたいと思います。
まず、1970年からの初婚同士夫婦と全夫婦の平均年齢差の推移をみてみましょう(図表1)。
年の差婚が増えているのであれば、夫婦の平均年齢差も拡大するはずですが、反対に縮小してきていることがわかります。しかも、2024年に婚姻届を提出し、結婚生活を開始した夫婦の平均年の差が全夫婦で1.9歳、初婚同士男女で1.4歳という僅かな年齢差となっています。
「昔よりも年齢の近い夫婦が増えている」という状態が、令和の結婚の実態です。初婚男女の間に平均2歳の差があったのは1996年までとなります(約30年前のバブル崩壊後、東京一極集中が始まったころまでの話)。そして、平均3歳の差があったのは第二次世界大戦終戦直後(1949年まで)という驚きの結果が示されています。
それにもかかわらず、例えばマッチングアプリで、32歳の男性が27歳の女性に結婚相手として選ばれることを年齢的に当然であると期待してしまったり、42歳の女性が35歳の男性からのアプローチを「遊びではない」と信じたり、といったことは少なからずあるケースです。絶対ないとはいいませんが、統計的にみると<いいね>が送られてきたとしても、「何か訳アリなのでは?」という視点をあわせもつことは、きわめて妥当な対応ということです。
かなり年下女性との結婚を期待している男性は、「かなり年上の女性がウェルカムだ」という男性が一方で増えていると感じているならば(男女の平均結婚年齢が近くなることから)、叶う可能性が高いかもしれない、ということになります。
しかしながら、「30代半ばの男性が28歳の女性を求めることは当たり前だけれど、28歳の男性が30代半ばの女性なんか求めるわけがないだろう!」という謎の(計算が合わない)感覚を持ちつつ、年下女性との結婚を期待する方が一定数いるのが現実です。
ところで、初婚同士夫婦の平均年齢差は1.4歳としても、具体的に何歳差の結婚が多いのでしょうか? 見てみましょう。
初婚同士の男女の結婚で最も多い年齢差トップ3(2024年)は以下の通りとなります。
- 1位 同年齢 22.8%
- 2位 夫1歳上 14.4%
- 3位 妻1歳上 11.0%
なんと(男女どちらかが上)1歳差以内のカップルが全体の48%も占めています(図表2)。つまり、24年に結婚したカップルの約1/2が1歳差以内のカップルです。
また、3歳差までのカップルが全体の7割を超えてきます。年齢が近いカップルほど件数が多い状態のため、年の差が開くほどマッチングが難しくなるということです。
全体の7割に入らないほど大きな年齢差の結婚を目指すということは、難関大学を目指す受験生とかわりません。難関大学を合格できるくらいの努力と、他の結婚希望者との(主観ではなく客観的な)相当な差別化が必要ということになります。
激減する年上夫割合/20代男性では年上妻が3割超
未婚化が少子化の主因となっているのは福井県も国も同様です。しかし、どういった結婚が大きく減っているか、という中身を分析すると、非常に角度がついていることがわかります。どういう意味でしょうか?(図表3)
1970年からの長期推移データをみてみると、半世紀で男性年上婚が79.5%から51.7%になんと30ポイント近くも大幅減少していることがわかります。2024年では51.7%ですので、もはや「結婚は男性年上が当たり前」な世界では全くない、といっていいでしょう。
法律上の婚姻には男性と女性の2つの性しかないため、全体の1/2を占めるというのは、よくある普通の事象といえるでしょう。
あわせて1990年代後半以降、「女性年上婚」の総数が「同年齢婚」の総数を超えている点も興味深いところです。男性の結婚年齢別に「年上妻割合」を分析すると、若い男性ほど、年上妻を選ぶ傾向が明確となっています。2024年の年上妻割合は初婚同士婚全体では25.5%ですが、29歳までの若い男性に絞ると32%に上昇します(図表4)。今の20代男性は3割以上が年上妻を選ぶ、ということです。これが30歳の男性だと23%、40歳の男性だと11%へと年上妻割合が急落します。年齢が上がるほど、自分よりかなり若い女性への執着が強まる傾向も、成婚を難しくしている要因であるといえるでしょう。
成婚年齢差を統計的にふまえた結婚戦略
いかがだったでしょうか。このコラムを通じて、結婚に関するフィルターバブルの怖さを少しでも理解していただけたらと思います。今回解説したデータから、もし皆さんが結婚に向けた相手探しをする場合、統計的にみて以下のような戦略が「願いが叶いやすい」戦略といえます。
- 申し込みや出会いの場において、同年齢の方との交流を優先する
- 1歳差までの相手とは上下関係なく、成婚可能性が高い相手として申し込み(アプローチ)を増やす
- 3歳差までで探す(ギャンブル婚活はしない)
また、注意しなければいけない点としては、
- アプリなどで極端に年下の異性から申し込まれた場合、相手が婚活ではない可能性を疑う
アプリで若い男女から申し込まれてついつい舞い上がってしまい、時間を割いて会いに行ったら、結局はママ活、パパ活、宗教勧誘、販売目的、ロマンス詐欺だった、というケースに遭遇した方もいらっしゃると思います。
年の差婚に対するこだわりが成婚を妨げているケースは、婚活迷走者(何年も婚活を続けている方)には非常に多く見られます。
「思ったような(イイ)相手から申し込まれない」
「申し込んでいるけれど反応がない」
「デートはできる、若い子に自分はモテてはいるけれど、結婚には至っていない」
といった方は、年の差婚にこだわっているうちに自らの年齢が上昇してしまい、成婚が難しくなるリスクの大きさをしっかりと踏まえたいものです。
過去の事例をみると、40代女性ばかりを狙う30代の独身偽装男性(販売目的)や、40代以上の中高齢男性を狙う10代後半から20代前半の違法な売春目的女性など、犯罪は「結婚希望者の年の差婚への甘い期待」を逆手に取ったものが非常に多い傾向です。
家庭をもちたい、子どもが欲しい、というのであれば、社会に潜むこういった闇に対する解像度とリスク管理能力をまずはしっかり高めておくことが大切です。
ニッセイ基礎研究所生活研究部
人口動態シニアリサーチャー
天野 馨南子(あまの・かなこ)氏
専門は少子化対策や東京一極集中、女性活躍推進など。 エビデンスに基づく分析や提言に取り組み、政府や地方自治体、経済団体の人口問題関連委員を多数務める。著書に「まちがいだらけの少子化対策」((一社)金融財政事情研究会)など。
